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東京高等裁判所 昭和32年(ラ)456号 決定

中央信用金庫

理由

抗告人は本件における債務者兼物件所有者であるが、原審東京地裁は債権者中央信用金庫の不動産競売申立に基き、昭和三十二年七月十一日競落許可決定を言い渡した。しかしながら、本件競売は四個の不動産につきなされたものであるのに、競売及び競落期日公告によると右各不動産についての最低競売価格の表示はなく、四棟の建物に対し一括して最低競売価格の公告があるだけであり、且つ競売人の申出価格も一括してなされたものであつて、各不動産につき果して幾何の競買価格を申し出たのか不明である。

若し各別に最低競売価格の公告があつたとすれば、一括競売の場合に競落不可能な者も、各個の不動産についてならば競落可能な場合があること勿論であつて、その点について競落価格が上昇することは明らかである。

従つて抗告人は本件競落許可決定によつて多大の損失を蒙ることになるから、原決定は取り消されるべきものである。

不動産競売手続において、数個の物件を各別に売却することは法律上の売却条件ではないのであるから、執行裁判所はその裁量により、数個の物件を一括して競売に付することができるものというべく、従つてこの場合にはその不動産全部につき一括して最低競売価格を定め、且つこれを公告すれば足りると解すべきである。として棄却した。

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